気分が落ち込んだり、何もする気にならない…など、気分の浮き沈みを経験する方は少なくないと思います。あるいは、何か、怠くて食欲がなくて、でも内科で調べても何も問題がなく、困っている方もおられるでしょう。
以下の症状が続いていないかチェックしてみてください。
- ①抑うつ気分(気分が落ち込む、うつうつとする)
- ②何時も楽しめていた事が同じように楽しめない、何にも興味がわかない
- ③眠れない、あるいは寝すぎてしまう
- ④食欲が落ちる/食べ過ぎてしまう、短期間で体重が大きく減る/増える
- ⑤いつも怠い、同じことをしているのに普段より疲れやすい
- ⑥集中力や判断力が鈍る
- ⑦喜怒哀楽がなくなった感じがする、あるいはイライラしたり落ち着かない
- ⑧自分に価値がないと感じたり、何でも自分が悪いと思ってしまう
- ⑨死ぬことを考えてしまう
これらは、全てうつ病になると出てくる症状です。①あるいは②があり、更に③~⑨の症状を含めて5つ以上の症状が少なくとも2週間以上続いている場合、うつ病の診断がつけられます。
うつ病は、原因により3つの「うつ病」に分類されます。
- 内因性うつ病 遺伝や素質が原因となり脳の機能のバランスが崩れてしまうことが原因
- 心因性うつ病 仕事上や家庭内のストレス、人間関係の問題などによる心理的負荷が原因
- 外因性うつ病 体の病気が感情に影響を与えるもの(脳の病気や甲状腺の病気など)
うつ病の状態は、言うなれば、気持ちや体のエネルギーのバケツが空っぽになった状態です。うつの状態になった方の中には、「こんなはずではない」「もっと~でなければ」「もっと~しなければ」と、バケツが空っぽなのに無理に動こうとしたり頑張ろうとしてしまって、余計に疲弊したり自分を責めるなど、悪循環を来たしてしまうこともあるようです。
うつ病の治療には、休息、薬物療法、環境調整、といった方法がありますが、治療の大前提となる大事な原則があります。今回は、それをお伝えしていきたいと思います。
① うつ病は病気であることを理解しましょう
うつ病に関する情報は、昔よりも浸透してはいますが、やはり「うつは甘えだ」「気合が足りない」という精神論のような議論も聞かれるのが現実です。しかし、うつ病は、世界中の研究で、脳の中の「神経伝達物質」のやり取りがうまくいかなくなって生じる「病気」であるという認識が大勢になっています。甘えや気持ちが弱いという問題ではなく、病気であり治療の必要があるものだという意識を持ちましょう。
② 休息が必要
うつ病に陥る方は、真面目な方が多いので、「休む=さぼる」という意識のもとで、調子が悪いのに頑張ってしまい、悪循環に陥るケースが少なくありません。休息して、少しでも余裕の幅を作っておかないと、お薬の効果も限定的になってしまいます。休息は薬の一部だと思って、思い切ってしっかりと休むようにしてください。周りに迷惑をかけてしまう…とおっしゃる方をよく見かけますが、元気になってからお返ししましょう。
③ 必ず治る病気です
うつ病になると、前回に示したように、様々な症状が出てくるため、うつ状態が長く続くと先が見えないような、不安や絶望感に苛まれる方もいらっしゃるでしょう。しかし、うつ病は治る病気だと考えられています。辛くて悲観的になる日もあるかもしれませんが「ちゃんと良くなる」事を忘れないでください。
④ 治療中に自殺をしない
うつ病の治療で「頑張らない」という事は大切なのですが、唯一頑張っていただきたいのは、「死にたくなっても行動に移さない」という事だと思います。死にたい気持ちは、あくまでうつ病の一症状にすぎません。死にたい気持ちが出てしまうという事は仕方がないのですが、とにかく行動に移す前に、誰かに話を聞いてもらったり、少し別の事をして時間を稼ぐなど、何とか凌いでいきましょう。凌ぎながら治療を続けていれば、徐々にうつ状態が改善するので死にたくなる気持ちも和らいでいきます。ご家族、主治医の先生、カウンセラーさんなど、周りの人に「治療中は自殺しない」という事を約束してください。
⑤ 経過中の症状は一進一退である
うつ病は、治療を始めることで一直線に良くなるという事はなく、「三寒四温」という言い方をしますが、良くなったり悪くなったりしながら、全体的にみればゆっくり底上げあされ改善していく、というイメージでいてください。時に落ち込んだりすることもありますので、そういう時はガッカリしたり焦ったりせずに、主治医の先生に相談したり、気持ちが上がってくるのを少し待ってみましょう。
⑥ 治療が終わるまでは大きな決断は保留しましょう
うつで辛い期間中は、思考の幅も狭くなってしまうので、白か黒かの二択で考えがちである事に加えて、不安や焦燥感も強いので、その気持ちに押されて重大な決断をしてしまい、後々大きな後悔をしてしまうことがあります。引っ越し、就職、退職、離婚など、大きな決断は、うつ状態が回復して、気持ちに余裕ができ、幅広い選択肢をもとに考えることができるようになったら、周りの人と相談しながら行ってください。
⑦ 薬は正しく使用しましょう
うつ病は「病気」です。前述したように、乱れた脳内の神経伝達物質のやり取りを整えるためのお薬(抗うつ薬)を使う事になるケースが多いと思います。あくまで、薬物療法を導入するかどうかは、医師の判断によりますが、薬を処方された場合は、処方箋通りにしっかり飲みましょう。また、残念ながらうつ病は再発しやすい病気ともいわれていますので、薬の治療で良くなっても、地固めとして同じ薬を飲み続けることが再発予防につながります。薬の継続、減量のタイミングも自分で判断せず、医師とよく相談してください。